今月の法話 令和2年の法話

今月の法話(令和2年4月)


佛法(ぶっぽう)(しん)じて今度生死(こんどしょうじ)をはなるゝ(ひと)の、すこし(こころ)のゆるなるをすゝめむがために、疫病(えきびょう)(ほとけ)のあたへ(たまふ)。はげます(こころ)なり、すゝむる(こころ)なり。

 

『師子王御書』弘安元年。聖祖五十七歳

疫病(えきびょう)(ほとけ)のあたへ(たまふ)


日蓮大聖人さまは、『立正安国論』で、国難について説かれています。

薬師経を引用され、人衆疾疫(にんしゅしつやく。伝染病)、他国侵逼(たこくしんぴつ。外国の侵略)、自界叛逆(じかいほんぎゃく。内乱)、星宿変恠(しょうしゅくへんげ。天体の運行の異常)、日月薄蝕(にちがつはくしょく。日蝕・月蝕)、非時風雨(ひじふうう。時ならざる激しい風雨)、過時不雨(かじふう。旱魃)の七難を上げられ、このうち、他国侵逼、自界叛逆の二難はまだ興っていないけれども、国が正しい仏法に背き続けるならば、これらも必ず起こると「予言」されました。蒙古襲来、法条時輔の乱として、この二難が現実のものとなったことは御存じの通りです。

もしかしたら、星宿変恠や日月薄蝕は、今日から見れば、災難の範疇には入らないかもしれません(太陽の黒点の位置や大きさが若干変化するだけで、地球の気候が変動したりするのですから、現代的な会通も可能かもしれませんが)。しかし、人衆疾疫が難であることは、鎌倉時代も現代も変わりはないように思われます。疫病が良いことでなどあろう筈がありません…。

ところが、その疫病をすら、前向きに捉えておられるのが、上の聖文です。

「仏の教えを信じて生死を出離しようとする人の心が少し緩んでいるのを奮い立たせるために、仏が疫病をお与えになる。これは励ますためであり、力づけるためである」。生死を出離するとは、覚りを開くこと、成仏すること。聖徒団の言葉を用いれば、総和すること。

新型コロナウイルス感染症が大問題になっています。この文章が聖徒の皆さんの眼に触れる時、どんな状況になっているのかは判りませんが、今月予定されていた日蓮宗聖徒団全国結集身延大会第五十五回記念大会が延期を余儀なくされました。

これを私たちへの励ましと受け止めましょう。

マスクや消毒液などの買い占めや暴利転売、感染者や感染の疑いがある人または中国人・韓国人への誹謗中傷、感染者に対応している医療従事者への差別、かと思えば、陽性であると承知しながら「ウイルスをバラ撒いてやる」と外出する人が現れるなど、恐れるべきは、新型感染症それ自体もさることながら、それによって乱されてしまう私たちの心です。

今こそ、御本仏の「はげます心」「すゝむる心」を領得し、「総和」する心を新たにいたしましょう。

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