今月の法話 平成28年の法話

今月の法話(平成28年1月)

日蓮にちれん慈悲昿大じひこうだいならば、南無妙法蓮華経なむみょうほうれんげきょう万年まんねんほか未来みらいまでもながる流布べし。日本国にっぽんこく一切衆生いっさいしゅじょう盲目もうもくをひらける功徳くどくあり。無間地獄むけんじごくみちをふさぎぬ。

『報恩鈔』
建治2年(1276) 聖祖55歳作 全:p173 定:2巻p1248

慈悲

仏教は、教主釈尊の救いの道であり、衆生済度の大慈大悲の表現です。仏道を相続するということの本筋は、仏学ではなく仏願の継承にあります。法華経如来寿量品に「毎に自ら是の念を作す。何を以てか衆生をして、無上道に入り、速やかに仏身を成就することを得せしめんと」とあるのは、仏願の何たるかを端的に示す類い稀なる表現です。

法華経によれば、仏願の真の相続人は本化の菩薩に限られ、その出現も末法の始めの五百歳を期することになっています。仏語を信ずることの篤かった正法・像法時代の聖者たちは、自分は其の人ではない、今は其の時代ではないとして、専ら学解を伝えて実践信行の弘通を遠慮しました。龍樹、世親、天台、伝教、みなそうでした。日蓮大聖人さまは、叡山の学窓に在ってこのことを覚られ、愕然とされました。

日蓮大聖人さまの鎌倉時代は、既に末法に入っていると信じられていました。本化の菩薩がどこに出現するかについては経は説いていませんが、弥勒の『瑜伽論』、肇公(僧肇)の『翻経後記』、伝経大師の記すところなどによれば、それらはどれも日本を指していました。しかし、当時の日本はといえば、流布している仏教諸宗はこぞって正法を毀謗し、国政は乱れて国主である天皇が島流しにされ、天変地夭が相次いで起こり、庶民大衆は塗炭の苦しみにあえいでいるのが現実でした。上行菩薩の出現はさておくとしても、法華経による救済が必要な時代であったのです。

かくて日蓮大聖人さまの開教宣言は発せられました。時代は末法、機根は下劣、国家は乱脈、流布は邪教、その真っ只中にあって、本仏悲願の救いを顕現するのに、学問智解の浅薬を用いて何の効能がありましょうか。「是好良薬」である五字の題目を信唱して具現する霊験奇蹟のみが、正法法華の救護を全うするのです。その証拠に、大聖人一代の行化は霊験奇蹟を以て綴られているではありませんか。

然るに、智解学解を偏重して仏道祖道の本筋を外れた近代の日蓮門下は、仏願祖願を見失ってしまっています。宗学者はその事法を知らず、信解脱の道を理解していません。いま、宗門の教勢は一向に振るわず、教学の沈滞は目を覆うほどです。

仏願祖願の相続人は、聖徒団・霊断師会において他にありません。

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