紙上法話

機を見るとは人に寄り添うこと

お寺でJAZZ


 新型コロナウィルス感染症も、感染症法上の分類が2類相当から5類に移行されて5ヵ月が経ち、私たちの生活様式も少しずつ落ち着きを取り戻して来ているように思われます。当山は大阪市内のお寺ということもあり、観光目的であろう方々のお姿が日に日に増えている様に感じます。
先日も、とある観光客の方が当山の境内探訪にお越しになりました。そして、お寺の行事日程をまとめている掲示板をご覧になって、近くで掃除をしていた私に声を掛けて来られました。
「お寺というと、お盆や彼岸、除夜の鐘や正月の法要くらいかと思っていましたが、ここのお寺はそれ以外にも色々な行事がありますね」。
確かに、当山では、少し変わった行事も行っています。「お寺でJAZZ」、「お寺で落語」、「お寺でオペラ」、「お寺でランチ」などです。これらは、檀信徒に向けての行事というよりは、地域にお住まいの方々や、イベントそのものに興味のある方々に向けて開催しているものです。
ことに「お寺でJAZZ」は、このイベントを実施するためにNPO法人を設立し、年2回開催してきており、今年で16年(32回)目を数えます。
宗教や仏教に関係ない行事に見えてしまう為、最初のうちはビジネス目的として見られることもしばしばで、他寺院から批判されることもありました。しかし、単にお寺という場所で開催するというだけはなく、プログラムの中に、普段はあまり仏教に関心を持っていないであろう方々に向けての法話を必ず組み込みながら続けて来た結果、地域にお住いの方に当山を改めて知っていただき、足を踏み入れやすいお寺、話しやすいお坊さんがいるお寺といったイメージを持っていただけたようで、様々な形でご縁を結ぶ事ができました。

さまざまな機との縁結び

 また、お盆や彼岸の際には子供会を開催しております。これらの法要はご家族で参列される事が多いのですが、読経中に子供が騒いで迷惑がかかるのではないかと思い、足を運びにくいというお声があったために、開催するようになったものです。年中行事に子供会を併催するようになってから数年がたちましたが、参加される方は年々増えており、「子供会があると安心してお参りができる」「子供会があるから家族で来やすくなった」というお声を聞かせていただけています。
こうした行事への取り組みは、「機をみて法を説く」という考え方に基づいています。
機とは、人の心の機縁、はたらきのことで、仏の教えを聞いてそれを修行しえる能力、衆生の各人の性格のことです。お釈迦さまは、聞き手がどんな人であり、どんな境遇にいるのかを常に意識されながら教えを説かれました。十人十色、百人百様、千差万別、まことに人はそれぞれで、どんな方が何に関心を持ってくださるか解りません。「何か面白そうだぞ」、とお寺にお出で頂ければ、それが切っ掛けとなって、そこで縁がつながり、教えに触れていただけます。
もちろん、九識霊断法もこうした対機説法の一つです。皆さんの九識が表れるのですから、示された結果そのものが、それぞれの方に即したものですし、ご相談の内容によって、ご祈祷をするのが良いのか、ご供養をするのが良いのか、法要はお寺でするのが良いのか、ご自宅でするのが良いのか、などなど、霊断法によってわかることに加えて、どのようにお伝えするのがその方にとって最適なのか、機を見なければなりません。
機を見るとは、要するに、相手の立場に立ち、相手を理解するということです。仏教の教えそのものを云々するに限らず、そうした気持ちを持って日々を過ごすことで、日常生活における出会いを活かし、私たちの人生が豊かになることにつながるのではないでしょうか。

-紙上法話

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