紙上法話

法華経を持つことが 第一の財(たから)

少欲知足の精神


 世界全体が変わってしまった世の中にあっても、心の幸福を忘れず持ちたいものです。

 「貧乏な人とは、少ししか物を持っていない人ではなく、無限の欲があり、いくらあっても満足しない人のことだ」

 これは個人資産の八割以上を寄付していることから「世界一貧しい大統領」と呼ばれていた南米ウルグアイ東方共和国の前大統領ホセ・ムヒカ氏が二〇一二年、国連持続可能な開発会議(リオ会議・Rio+20)においてスピーチをした内容の一部分です。私達仏教徒にも通ずる言葉だと思います。

 「妙法蓮華経普賢菩薩勧発品第二十八」には
「若し是の法華経を受持し読誦し正憶念し修習し書写することあらん者は(中略)是の人は少欲知足にして能く普賢の行を修せん。」とあります。

 法華経に触れ、それを信仰として持続し、行法として法華経を読み、仏・菩薩が衆生を救済しようと願い定めた誓いを叶えんとし、教わったことを身につけ、法華経を書き写す行を行う人は、欲張らないで、与えられた現実を素直に受け入れる人であり、衆生救済の行を修している人である、ということです。「少欲知足」の精神です。

 あまり、いろいろな物を欲しがらず、ほどほどの状態で満足すること。 欲望を全て消してしまうのではなく、欲張らないで、与えられた現実を素直に受け入れること。コロナ禍にあって私達に必要なのはこの精神ではないでしょうか。

 さらにムヒカ氏は「幸福が私たちのもっとも大切なものだからです。環境のために戦うのであれば、人類の幸福こそが環境の一番大切な要素であるということを覚えておかなくてはなりません」とスピーチされています。

法華経のみ教えを日々の生活へ取り込む


宮沢賢治は「世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない」(『農民芸術概論綱要』)と言いました。

 また、日蓮大聖人さまが「さいわいは心より出でて我をかざる」(『重須殿女房御返事』)さらに、「心の財第一なり」『崇峻天皇御書』と説かれておられます。個人の幸福は世界の幸福であり、この幸福を得るために法華経を持つ第一の財たる心が、幸福に満ち溢れていなければいけません。それこそが仏国土の顕現であり成仏の姿であります。

 しかしながら法華経を持つことは「難信難解」、信じ難く解りづらいと方便品第二にあります。

 日蓮大聖人さまも「受くるはやすく、(たも)つはかたし。さる間成仏は持つにあり」『四條金吾殿御返事』と法華経を持つことが大事で難しいことだと教えてくださっています。

 「(たも)つ」ということは法華経のみ教えを日々の生活に取り込み、それに照らして自らの行動をコントロールしていくこと。そのことが肝要であるということなのです。
読者の皆さまにおかれましても「法華経を(たも)つ」ことを念頭に置き、日々の仏道修行に邁進されますよう。

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