西郷隆盛さんが残した偉大なエピソード
今年のNHK大河ドラマは『西郷どん』。いわずと知れた明治維新の立役者、西郷隆盛を主人公とした非常に面白い物語です。西郷さんといえば大きな身体、大きな瞳を想像しますが、その思想哲学、そして心の大きさは天のように広大なものであります。
明治27年に内村鑑三が著した『代表的日本人』では、西郷隆盛、上杉鷹山、二宮尊徳、中江藤樹、そして日蓮大聖人さまが世界に向けて紹介されております。まことに各々が素晴らしい立派な人格を有し、かつ実践をされた人生を歩まれた真の日本人ともいう5人の聖人であります。日蓮大聖人さまは申すべくもなき尊い方でありますが、西郷さんも公平無私を貫き、上下を嫌わず等しく万人を愛した大人物でした。
西郷さんの思想を窺い知るものとして、庄内藩(山形県)の藩士が直接聞いたものをまとめた『南州翁遺訓』があります。戊辰戦争の時、庄内藩は幕末最強の幕府軍と謳われ、新政府軍に対し徹底した抗戦をしました。やがて降伏に至り、戦後処理を行ったのは恨み深き薩摩軍の長である西郷隆盛。しかし、西郷さんは戦争の終わった今は敵味方なく同じ日本人であるといい、新政府軍の一切の武装を解除し、庄内藩の人には武装を許して入城し会談を行ったといいます。戦後も寛大な処置と態度で臨まれた西郷さんに、庄内藩の侍達は深く敬服し教えを請い『南州翁遺訓』ができたといいます。
西郷さんの大きさを伝えるエピソードは数多くありますが、いずれも自分のことを勘定に入れず、万民のために命を捧げられたものばかりです。
日蓮大聖人さまは『観心本尊鈔』に「堯舜等の聖人の如きは、万民に於て偏頗無し、人界の仏界の一分なり」と述べられておられます。つまり、仏の心である大慈悲心を表現された人を聖人といいますが、聖人は偏頗といって「かたよる」心を持っていない公平であるとご教示されておられます。自分にとって良いことをしてくれる人は好き。嫌なことをしてくる人は嫌いだと、平凡な私たちは思いがちでありますが本当は違うのです。日蓮大聖人さまや西郷さんのように人間の生命に仏身を拝することこそが私たち人間の成仏の道であります。
天を敬い人を愛すお題目と成仏の道
さて、西郷さんの座右の銘は『敬天愛人』。「天を敬い、人を愛する」単純な言葉のように聞こえますが、これほど的を射た「人の歩むべき道」をあらわした格言はあったでしょうか。私は日蓮大聖人さまが教えてくださった「南無妙法蓮華経の道」、このみ教えに通じるものを感じます。
寿量ご本仏さまの名を「妙法蓮華経」といい、私たちはそのご本仏さまという大生命に「南無(帰命)」致します。ありとあらゆる一切の生命に我が命を捧げる(帰命)ということは、あなたに敬意を表し、そしてあなたを愛すること。現代に生きる私たちが理解しやすい「南無妙法蓮華経の道」とは、まさにこれを意味するところであります。
嫌いな人間を愛することは難しいものです。まず私たちが愛さなければならない人は一番身近な家族、特に夫は妻を愛し、妻は夫を敬い、親は子を愛し、子は親を敬う。ここができなければ到底成仏はできず、幸せにもなれるものではありません。
倶生霊神符を着帯して、夫も妻もお互いが勤しむ家事や仕事の大変さを理解しあい、補い合える関係を保ち、尊敬し励ましあってお互いを高めあう存在となることが必要です。自分のことばかり勘定に入れずにお題目を唱えて生活する。「南無妙法蓮華経の道」は、ここから始まります。