世界遺産・富士山は芸術の源泉と信仰の対象
平成25年(2013)6月26日、日本の富士山が、ユネスコの世界文化遺産に登録されました。正式名称は「富士山、信仰の対象と芸術の源泉」と言い、山岳信仰や葛飾北斎らの浮世絵などの文化的価値が評価されています。
富士山の山開きは、静岡県側の富士宮口・御殿場口・須走口は7月10日。山梨県側、富士吉田口の山開きは7月1日です。この富士吉田口ルートが初心者向けと言われ、昨今富士山を見ようと多くの外国人や旅行者が訪れています。倶生霊神符を胸に富士山に登った聖徒さんもいらっしゃることでしょう。
富士吉田口には、JR中央本線大月駅で富士急行線に乗り換え、富士山駅、あるいは終点の河口湖駅から、富士山5合目行きバスで、終点5合目駐車場まで行きます。
この駐車場から、山頂に向かう道を20分ほど進むと泉ヶ滝の分岐に至ります。登山者はここから5~6時間の登山で富士山頂を目指すことになります。
上に進まず、なだらかな道を20分ほど進めば佐藤小屋に到着します。さらに10分ほど登りますと「富士山経ヶ岳」と呼ばれる日蓮大聖人さまゆかりの地に到着します。
ここは富士山の中腹「5合5勺目」の高さにあり、昔から「天地の境」「お中道」と呼ばれ登山修行の入門地点とされていました。
ここを訪れた人々からは「自然と心が清く明らかとなり、天界を行く思いがする」と言われてきました。見上げれば富士山頂に、手の届くが如く思え、見下ろせば唐松・白樺などの群生林が広がり、古来、「富士の奥庭」と呼ばれる景勝地です。
経ヶ岳は、突出した巨大な岩の塊まりで、裏手の小さな横穴は「うばが懐」と呼ばれ、如何なる風雨も防ぐことができると伝えられています。
今から749年前の文永6年(1269)日蓮大聖人さま48歳の5月、現在の山梨県富士吉田市の北口本宮富士浅間神社に詣でられ、宮司であった塩谷平内左衛門の案内で、経ヶ岳に登られ「日本国安泰」の祈念を込めて書写された法華経八巻を埋経されました。
そして百日間「うばが懐」に篭られ「他国に侵略されないように、日本が安泰であるように」祈られたと伝えられています。
以来この地を「経ヶ岳」と呼ぶようになりました。
聖地・経ヶ岳の存在と日蓮大聖人さまの願い
日蓮大聖人さま39歳の時、鎌倉幕府に提出された「立正安国論」に
「天下泰平・国土安穏は、上下万民の願う所です。考えて見れば国は、仏法によって栄え、仏法は人によって尊ばれます。国が亡び人々が亡びたならば、誰が仏教を崇め、誰が信心をするでしょうか。ですからまず国家の安穏を祈って、その後に仏法の流布を計画すべきです」
と言う内容の一節があります。
日蓮大聖人さまは、いつでもどこでも日本国の安穏を祈られていたことでしょうが、ここ富士山経ヶ岳は特別な場所なのです。
現在経ヶ岳には「立正安国」を説かれる日蓮大聖人さまの大きな銅像が建ち、傍らに鉄筋コンクリート造りの六角堂、常唱殿があります。
この霊地にて身延山久遠寺は、毎年7月初めの吉日に「立正安国・世界平和・祈願法要」の大祭を開催しています。日蓮宗には日本一の富士山に、このような祈りを捧げる霊場があります。
ぜひ多くの皆さまに、この経ヶ岳の存在を知っていただき、お参りいただいて、日蓮大聖人さまを偲び、日蓮大聖人さまの魂と共に「世界の平和・国家の安穏」を祈り「自然と心が清く明らかとなる」この聖地で、ご自身の繁栄・安穏もお祈りいただきたいと思います。