首導月訓 令和5年の月訓

首導月訓(令和5年2月)


◆NHKの新しい大河ドラマ「どうする家康」が始まった。意気地無しの「ヘタレ」の家康が成長して行く姿を描くようである。

◆豊臣秀吉であれば、史実ははっきりしないものの、足軽程度の階層の出身で、小柄で容姿にも優れず「猿」と呼ばれた草履取りから、関白・太政大臣にまで上り詰めたことは巷間に流布しているので、文学や演劇において、軽妙に表現されることも多いようであるが、家康の場合は、幼少時から長じて江戸幕府を開く偉人としてのイメージで描き出されることがほとんどであったから、その辺りがドラマの新味になるのかもしれない。

◆秀吉も家康も、生まれながらの天下人であったワケではない。それどころか、自身が天下人になることなど夢にも思わなかったであろう。しかし、先々天下人となる資質が、生まれながらにこの二人にあったことも間違いない。それが二人の生涯を通じて、育ち、引き出され、結実して行ったのである。これを仏教では因縁所生と言う。

◆振幅の巾はあるにもせよ、こうした変化は、私たちの誰にでもある。私たちの誰もに潜んでいるものがあり、このことを「空」と言う。空はカラなのではなく、モノの形を超えるということである。モノの形を超えるから、(すがた)はなく、密かに存在している。無相密在である。隠れている因が縁によって顕在化する。因縁所生せられたものが顕れるのである。

◆日蓮大聖人が『開目鈔』に「九界も無始の佛界に具し、佛界も無始の九界に備て」と記されたところはかくなることである。

◆人生においては、良き因縁、私たちを啓発し、向上せしめ、私たちの中から最も優れたるものを引き出すものと出会えるかどうかが鍵である。その無二の方法こそが、三大秘法の南無妙法蓮華経なのである。

日蓮宗聖徒団首導 髙佐日瑞

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