首導月訓 令和2年の月訓

首導訓辞 全文「総和の大理想実現の『瑞相』に」-日蓮宗聖徒団全国結集身延大会第55回記念大会-

 去る10月6日・7日、総本山身延山久遠寺において日蓮宗聖徒団全国結集身延大会第55回記念大会が開催され無事円成いたしました。大本堂奉告式における、髙佐日瑞首導による「首導訓辞」を掲載します。

感染症との戦いは宗教的課題

日蓮宗聖徒団全国結集身延大会第55回記念大会開催にあたり、全国遠近各地よりご参集の霊断師の各聖、またライブ映像にてご参加の聖徒団の各聖各位、まことにご苦労様でございます。


現在、世界中に蔓延している「新型コロナウイルス感染症」という病魔を鑑み、4月の開催予定を本日に延期し、更に感染拡大防止のため、補佐の聖徒さんを例外として、霊断師各聖主体にお集まりいただき、聖徒団のシンボルである団旗を結集しての大会とすることといたしました。


東日本大震災が勃発いたしました平成23年の第46回大会以来、毎年のように、災害、災難のことに触れて参りましたが、疫病という厄災には、虚を衝かれた思いをしているのは、私だけではないのではないでしょうか。


思えば、人類の歴史は、感染症との闘いでもあったことは、歴史の証するところであり、日蓮大聖人も、『立正安国論』の冒頭に「近年より近日に至るまで天変地夭飢饉疫癘遍く天下に満ち、広く地上に迸る」と国難として「疫癘」を上げられ、そこに引かれた「薬師経」所説の七難の第一も「人衆疾疫難」であったところです。


もちろん、大聖人御在世当時は、ウイルスのことも、感染症のメカニズムのことも解明されておりませんでしたから、往時と現代とをあたかも同一視して教えを説くような愚を犯してはなりませんけれども、日蓮大聖人が、自らの宗教的な課題として、「疫癘」「疾疫」というものを受け止められたということを忘れてはなりません。


実は、聖徒団初代首導行道院日煌聖人は、流行初期のスペイン風邪に罹り、命を落とし掛けられたことがおありになりました。


大正7年の9月12日、龍口法難会の際、法要を営まれたあと、法話をされていた最中に、昏倒されました。急性肺炎となって40度の発熱、幾たびか脈拍も停止してしまわれたほどでした。呼吸が15分近く止まっていたと、後日、医師に告げられたことを、お書き残しになっておられます。

高熱に苦しんで眠れずにいた時、枕元で如来寿量品を読んで貰い、暫時熟睡することができたのが闘病に大きな効能があった、とのことです。

お題目の信仰こそが真の大良薬

千葉布教区長・佐藤隆昭支部長が、全国聖徒団を代表して「首導訓辞」を拝受

大聖人が、龍口の法難の際、倶生霊神のご加護によって一命を取り留められたこと、そして、この御法難に続く佐渡配流を経て、『開目鈔』『観心本尊鈔』が著され、大曼陀羅ご本尊が開顕され、日蓮仏教がまさにその真面目を発揮して行くことを思い併せる時、創祖が倒れられたのが龍口法難会の際であったこともまた、先ほど奉告文で引いた、寿量ご本仏の「はげます心」「すゝむる心」であったものと感じます。


明年2月16日、あと4ヶ月余りで、高祖大聖人御降誕八百年を迎えます。その時に、このコロナ禍は、まだ克服されてはいないかもしれません。


日蓮大聖人は『智慧亡国御書』に「大悪は大善の来るべき瑞相なり。一閻浮提うちみだすならば、閻浮提内広令流布はよも疑候はじ」と記しておられます。


大悪が大善の瑞相となるというのは、何もせずにそうなるのではありません。正しい信仰があってこそ大悪が大善を生むのであり、大悪を大善の瑞相にするためにこそ、正しい信仰があるのです。悪病であればあるほど、最良の薬でなければ治せないのであり、お題目の信仰こそが、真の大良薬です。


新型コロナウイルス感染症は、世界の在り方を変えるだろうと言われています。どう変わって行くのか。それが、感染症を封じ込めるための統制国家への道筋であったり、息の詰まるような相互監視社会への行程であったり、人と人、地域と地域、国家と国家との紐帯を弱めようとする孤立主義への経路であったりしてはなりません。


いまこそ私たち聖徒団は、自らが地涌の菩薩であることを自覚し、総和の大理想の旗を高く掲げ、この苦難に立ち向かわなくてはならないのです。


大悪が興起している今だからこそ、お題目の神秘、九識霊断法の不思議、倶生霊神符の守護が顕わになります。新型感染症を、総和の大理想実現への「瑞相」とするのは、私たちの信仰の力以外にはないのです。


明年は、日蓮大聖人の魂魄宿る聖地身延山に、文字通り結集できることを祈りつつ、日蓮宗聖徒団第55回記念大会における、首導の訓辞といたします。
南無妙法蓮華経


令和二年十月七日 日蓮宗聖徒団首導
大教統 髙佐日瑞

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