◆仏教では、人生を「苦」と見る。この世、すなわち娑婆世界を忍土とする。
要するに、人生は、苦労するもの、この世は堪え忍ぶ世界、と見るのが、仏教の基本である。
◆仏教では、「苦」を四苦八苦に分類する。四苦とは生・老・病・死。四苦に怨憎会苦・愛別離苦・求不得苦・五盛陰苦を加えて八苦とする。
◆この八つの苦は、要するに、求不得苦(求めて得ざる苦)の一つに収斂すると考えることができる。死苦が、死なない命を求めて得られない苦であるように、他の苦も、人の、かくありたいという願いが叶わないことだといえるからである。
◆してみると、求めなければ苦は発生しないことになり、求めさえしなければ人生苦は発生しないことになり、求めさえしなければ人生苦は解決する。いわゆる原始仏教は、この方法を実践して、苦からの解脱を企てようとした。
◆ところが、困ったことに、私たち人間が求めるのは生まれつきなのである。人間は、求めるように造られているのであるから、それが苦の原因であるといわれても、では求めないようにしましょう、とは行かないのである。
◆人間には、本能という生まれながらの強烈な欲望がある。中でも、物欲、性欲などは、なかなか制しがたいものである。世間に行われている悪というものは、そのほとんどが、物欲か性欲に原因していることは、誰もが知るところであろう。
◆だからといって、物欲や性欲がない人間ばかりになったとしたら、どうであろう。世の中の進歩は止まり、人類は滅亡することになってしまうことになろう。
◆人生苦の解決は、人間が求めていることの根本を成就させる道を見出すことでなければならない。その道こそが、日蓮大聖人さまの三大秘法であり、お題目の信仰なのである。