聖徒団信仰Q&A

聖徒団信仰Q&A〈第36回〉「お万の方①」

質問ちゃん
問 お万の方について教えて下さい。(岡山県 60代 女性)
お答え上人
答 聖徒タイムズの先月号をご覧になり、興味を持たれたとのことですね。
 聖徒団の首導である髙佐日瑞猊下が貫首を務めておられる本山・大野山本遠寺は、身延駅から車で三分、久遠寺からは車で五分ほどのところにあります。霊断師会の伊丹会長が貫首となられた本山本満寺から、身延山久遠寺第二十二世法主(ほっす)(すす)まれた心性院日遠聖人(しんしょういんにちおんしょうにん)を開山といたします。
 大野山の開基檀越は養珠院殿妙紹日心大姉(ようじゅいんでんみょうしょうにっしんだいし)、通称「お万の方」です。お万の方は、徳川家康公の側室であり、紀州徳川家の家祖徳川頼宣、および水戸徳川家の家祖徳川頼房の生母となりました。法華信仰篤く、江戸初期における日蓮宗の発展に多大な寄与をされた方です。心性院日遠聖人に師事され、当時女人禁制であった七面山に登詣され、七面山女人踏分けの祖としても知られています。
 江戸時代における日蓮教団の最大の危機として慶長法難が上げられます。尾張国熱田での法論を切っ掛けとして、幕府の命による日蓮宗と浄土宗との宗論がありました。この時、恐らくは幕府の妨害によって日蓮宗側が出席できず、一方的に日蓮宗側の負けとされました。そして、幕府は、日蓮宗の主張する「念仏無間」は文証なきものであるという誓約を求めました。
 諸本山が誓い状を提出するなか、これに反対したのが、時の身延山久遠寺法主心性院日遠聖人でした。日遠聖人は身延山法主の立場から契約書の提出を断り、雪辱のために浄土宗と対論したいと申し出ました。
 このことに激怒した家康は、日遠聖人を駿府の安倍川原で(はりつけ)にしようとします。これを聞いたお万の方は、家康に日遠聖人の助命嘆願をしましたが、家康は聞き入れません。するとお万の方は「師匠である日遠聖人が死ぬ時は自分も死ぬ」と、()ずから二枚の死に装束を縫ったのです。さすがの家康もこれには驚いて日遠聖人を放免しました。
【続】

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