◆布施は最高の美徳である。布施には4種の方法がある。第一が法施。精神文化の普及を図ること。第二が財施。金銭物品を人に贈ること。第三が身施。労力を無償で提供すること。第四が無畏施。愛情を以て人を遇すること。4つとも利他行であって、これこそが、社会を平安にし世界を平和にする道である。
◆利他行は、報酬を求めない清潔な心で実践しなければならない。ところが、世間では、海老で鯛を釣るために金銭物品を贈与する者が多い。貰った方は、義理を感じ、好意を以てむくいなければならないような気持ちになるのが人情である。こうして、贈収賄の生まれる素地となったりする。
◆中元や歳暮の贈品や、ご祝儀や御香典などは、返礼を期待せず、日頃の好意に感謝したり、先方の喜びごとを祝福したり、悲しみごとを慰める布施であるべきであるが、何かしらのお返しがあるものと決めつけて、社交的なゼスチュアとして金銭や品物を贈るのが世の常である。
◆言ってみれば、品物に見えない請求書をつけて贈っているようなものである。贈った物に比して、粗末な返礼であったりすると、気分を悪くしたりする。これでは、本当の布施にはならないし、贈られた方も、感謝の気持ちが起こってこない。
◆真の布施の精神を忘れて、美徳のマネごとをするから、かえって醜いものが顔を出すのである。金銭物品を贈与する時は、人を喜ばせることを無上の報酬と心得たい。十字聖日には、そうした無償の布施の実践を心掛け、布施の喜びを味わう機会として、真の布施の精神を涵養すべし。