そそのかされたアジャセ王 犯してしまった大きな罪
皆さまは、十界の「大曼陀羅ご本尊」をよくご覧になったことはありますか。
色んな仏さまや菩薩さま、天照太神さま・八幡大菩薩さま、鬼子母神さま・龍神さまなどが勧請されて、南無妙法蓮華経のお題目の光に照らされていらっしゃいます。その中にはアジャセ王という王さまも。アジャセ王は『妙法蓮華経』の序品第一に「韋提希子阿闍世王」とあり、イダイケの子・アジャセ王が、お釈迦さまが霊鷲山で妙法蓮華経をお説きになられた時に集まられた大勢の中の一人ということです。
アジャセ王は、霊鷲山があるマガダ国の王さまで、イダイケとは、アジャセ王のお母さん。お父さんは前国王ビンビサーラです。
ビンビサーラ王は、お釈迦さまの教えを深く信じ、仏教教団を手厚く保護し帰依していました。しかし、ある日、ビンビサーラ王の息子であるアジャセがクーデターを起こして、なんと父親であるビンビサーラ王を牢屋に閉じ込め、飢え死にさせてしまったのです。このような恐ろしい行為をアジャセにさせたのは、同じく大曼陀羅ご本尊に勧請されている提婆達多にそそのかされたからなのです。
提婆達多は、お釈迦さまの従兄弟です。八万法蔵という莫大な教えを暗誦するほどの頭脳明晰な人物でありながらお釈迦さまを敵対し、「殺阿羅漢・出仏身血・破和合僧」を犯し無間地獄におちた方です。しかし、「妙法蓮華経」に提婆達多品第十二にて成仏の保証を受けました。
さて、アジャセ王は、母親イダイケも牢屋にいれます。イダイケが自分の体に蜜を塗り、ビンビサーラ王の牢屋に入り蜜をなめさせ飢えから救おうとしていたことを知り、母親も牢屋に閉じ込めたのです。
その後、アジャセ王は病気になり苦しみます。イダイケは牢屋から出してもらい、アジャセ王を弱った体でありながら看病しました。アジャセ王は自分の罪を反省し、父親ビンビサーラ王が帰依していたお釈迦さまにすがりたいとの思いが強くなり、ついにお釈迦さまに会いに行き懺悔したのです。心からの懺悔により罪は朝日に照らされた露のように消えていくのでした。
それからアジャセ王は、お釈迦さまの教えを深く信じ、仏教教団を手厚く保護し帰依したのです。
心からの懺悔(さんげ)によって 消えゆく罪はたちまちに
日蓮大聖人さまのご妙判に
(意訳)「針は、細く小さなものですが水に沈みます。雨は空にとどまることなく、地上に降ります。アリを殺した者は、地獄に堕ち、しかばねを切った者は、悪道に堕ちることから免れない。まして、人間として生まれた者を殺した者は、地獄に堕ちることはいうまでもない。しかし、大石も船の力があれば海に浮かぶことができる。大火も水のはたらきで消えることがある。小さな罪でも、懺悔しなければ悪道を免れることはない。逆に大きな罪でも懺悔すれば罪は消えるのです」と。
たとえ間違いを犯しても、心から懺悔すれば救いの道が開かれるのです。
皆さまも『日蓮宗聖典』の「懺悔文」を読まれたことがあると思います。
その懺悔文には「若し懺悔せんと欲せば。端座して実相を思へ。衆罪は霜露の如し。慧日よく消除すと。仰ぎ願わくば。唱えたてまつる南無妙法蓮華経の慧日。」とあります。
(意訳)「もし罪を犯してしまい、懺悔したいと思ったならば、寿量ご本仏さまのご宝前に跪(ひざまづ)きなさい。あらゆる罪はご本仏さまの光に照らされて、消滅するのです。その光とは南無妙法蓮華経の神秘的な光なのです」。
つまり、心からの懺悔はお題目を信じて唱えることで、小さな罪も大きな罪も、霜や露が太陽に照らされるように消えていくのです。
ちなみに「懺悔」と書いて「さんげ」と読みます。「ざんげ」はキリスト教の読み方です。キリスト教の「ざんげ」は、自分の罪を告白して神さまに許しを請うもので、「さんげ」は、自分自身が自分の心を本来の清らかな状態に戻すための修行です。
本来の清らかな心に 戻すのが懺悔の修行
しかし、最近は政治家官僚、スポーツ界、大学、大企業、など本来手本となるべき人が問題をおこすなど、本当に懺悔してほしいと思う事件が多いです。
私たちも大なり小なり罪や失敗を犯すものです。日頃から倶生霊神符を着帯しお題目を唱え、「懺悔文」をお読みし、さらには「積功累徳」の写経本で懺悔文を写経しながら、自分をかえりみて反省することが大切です。
また、大事なことは懺悔し悔い改めた方が新たにやり直そうとされてる時、それを邪魔しようとせずそれを見守る心を持つことです。